身を捧ぐという倒錯

昨年の暮れ、工場で派遣社員として働き始める。
2交代制、日勤と夜勤の12時間入れ替わり勤務。
極小の電子部品を扱っているため肉体的にはそれほどハードではなく、立ちっぱなしにも既に慣れた。食堂のご飯はパサパサだが200円で食べられるのだから文句はない。
ブラック企業、ハラスメントといったワードはもはや誰でも知っているわけだが、「この会社ブラックだよね」とか「パワハラを受けた」なんていう会話も特段変わったものではなくなり、やれやれといった感じで泣き笑いというか自虐というかどうにかスルーするのが大人の作法であり、実際それで世の中つつがなく回っているという側面もあるとは思う。しかしどこまで我慢し、譲歩すればいいのかは明確ではない。

滅私奉公、この身を捧げたいという願望を持ち合わせた人が一定数いる。国家のため、企業のため、というのが定番だろうが各々好きにすればよい。しかし他人に強要するのはおかしい。それが上司と部下の間でおこなわれるのは尚更である。将棋やチェスの駒のように扱われるということが。
人間やめろ、感情捨てろ、と上司が言い放った時、私は仕事の手を止め猛然と抗議した。原因はそれだけではない、それまでの非人間的な仕打ちに嫌気が差していたのだ。人をコストとしてしか見ることのできない冷酷な目に吐き気を覚えたのである(ちなみに労働相談というかホットラインらしいところに電話やメールもしたが、電話は何度かけても繋がらず、メールの回答はお世辞にも意味があるとは思えなかった)。

私は派遣会社にその旨を申し出ると、結果その上司と離れることになった。予想外に対応はスムーズだった。言ってよかったと思った。
が、現場では私の我慢が足りないのでは・・とか、生意気な・・とか一部で言われたりもしているようだ。